2025年11月7日、東京商工会議所 Hall & Conference Room にて、認定NPOカンファレンス「ignite!」が開催されました。
「社会課題解決をあきらめない」という思いを胸に、全国の認定NPOのリーダーたちが集い、活動の未来や組織のあり方を見つめ直す場として、さまざまな学びや対話が交わされました。
なかでも会場が大きな熱気に包まれたのが、団体のビジョンや挑戦をまっすぐに伝えるピッチコンテストです。
この記事では、認定NPO法人フローレンス・赤坂緑さん のピッチをご紹介します。
登壇者情報
赤坂 緑
特定非営利活動法人フローレンス
代表理事
1999年慶應義塾大学経済学部卒。事業会社にてマーケティング・育成等を担当後、2014年認定NPO法人フローレンス入職。
病児保育事業・保育園事業の事業部長を経て、2018年に役員、2022年に代表理事に就任。
現在は、全社の人材・組織開発、事業運営や政策提言全般に携わる。キャリアコンサルタント・保育士。2児の母。
認定NPO法人フローレンスの赤坂緑です。
今は代表として登壇していますが、実は私はもともとフローレンスの病児保育の“利用者”でした。
長男が生まれて、0歳の頃から保育園に預けて仕事を続けていました。私はフリーランスで大学の授業や講演の仕事をしていたので、とにかく穴をあけられない。「絶対に休めない」というプレッシャーのなかで働いていました。
でも子どもは熱を出します。よりによって“今日こそは”という日に限って、高熱を出してしまう。
そんなときに出会ったのが、フローレンスの病児保育でした。
朝いちばんでスタッフが自宅に来てくれて、初めて会う人に泣きじゃくる我が子を預けて出かけるのは後ろめたさもありました。
でも、帰ってくると子どもはにこにこして抱っこされている。「お薬こんなふうに飲めましたよ」「お熱が落ち着いたのでこんな遊びをしました」と丁寧に伝えてくれる。
そして最後に「お母さん、昨日から大変でしたね。本当にお疲れさまでした」と声をかけてもらうと、思わず涙が出てしまうこともありました。
私は病児保育に支えられて働き続けることができたし、精神的にも本当に救われました。
だから今度は“誰かを支える側になりたい”。そう思って12年前にフローレンスに飛び込みました。
見過ごせない、どうしても許せない現実がある
私は長く不妊治療をしていて、ようやく生まれた我が子を初めて抱いた日のことを今でも覚えています。
だからこそ、どうしてもスルーできない現実があります。
それが 赤ちゃんの遺棄虐待です。
0歳0日、つまり生まれてすぐに亡くなる赤ちゃん。
その数は年間16人。1か月に1人以上です。
私は、この「16」をゼロにしたい。
たった0日で命が絶たれてしまうなんて、どうしても嫌なんです。
私たちは妊娠相談の事業を通じて日々さまざまなSOSを受け取っています。
せっかく命を授かったのに、誰にも相談できず、誰にも言えない。
お腹が大きくなっていくなかで、たったひとりで絶望的な状況に置かれてしまう。
トイレでひとりで出産してしまうようなケースも現実にあります。
赤ちゃん遺棄のニュースを見ると、「かわいそう」「ひどい母親だ」「自己責任では?」と感じる人もいるかもしれません。
しかし、その背景には“誰にも頼れない孤独”があります。
私たちフローレンスは、この状況をただ悲しむのではなく、1ミリでも良い方向へ変えるために動いています。
解決の鍵は「透明な妊婦をなくすこと」
0日で亡くなった赤ちゃんの母親の約9割が一度も受診していなかった。そんなデータがあります。
社会からまったく見えていない妊婦。
家族とも、公的支援ともつながっていない妊婦。
私たちは彼女たちを 「透明な妊婦」 と呼んでいます。
逆に言えば、一度でも受診につながれば、“透明”ではなくなります。
だから私は、 「妊娠したかも」と思ったら、誰でも無料で安心して受診できる社会にしたいと考えています。
そのために、私たちは寄付を原資に次の3つのアクションを続けています。
1.妊娠相談
相談員が孤独な妊婦に寄り添い、適切な支援につなぎます。
2.無料産院
全国4つの産院と連携し、安心して受診・出産できる仕組みをつくっています。
3.政策提言
妊娠確定診断の無償化を求め、制度として誰もが受診できるよう働きかけています。
社会は変えられる。時間はかかっても、ひとつずつ
社会を変えるのは一足飛びにはいきません。
現状を知り、小さな改善を積み重ね、制度を動かし、少しずつ社会を変えていく。本当に時間がかかることです。
それでもフローレンスは、たくさんの人と協力しながら、これまでも社会を動かしてきました。
・待機児童問題:少人数の認可保育園の制度化(7年)
・医療的ケア児支援:専門保育園の創設から支援法成立(9年)
時間はかかったけれど、確実に前進してきました。
だから、赤ちゃんの遺棄虐待「16」をゼロにできる日も必ず来ると信じています。
仲間が必要です。あなたも今日からその一人になれます
私自身、病児保育と出会って「子育ては社会でするものだ」「頼っていいんだ」と視界が開けました。
社会を変えるなんて考えたこともなかった私でも、少しずつ“変えられる実感”を持てるようになりました。
今日の話を聞いて「自分も何かしたい」と思ってくれたら、とても嬉しいです。
仲間のあり方はいろいろあります。
寄付でも、アイデアでも、関心を持つことでもいい。
今日ここにいる皆さんのうち、一人でもこの課題の仲間になってくれたら、心から嬉しく思います。